映画「靖国 YASUKUNI」
 一時期、賛否両論でかなり盛り上がっていた「靖国」を見ました。

 一通り見終えた最初の印象は、拍子抜け、でした。
 騒動から受けていた、見る前のイメージほど、反対にも、賛成にも偏っていない。

 この「靖国」という作品が、上映される前から問題になったのは―つまり、大多数の人が見る前から勝手に内容を推測し、断定して「上映するな」と騒いだのは、監督が中国の人だったからでしょう。
 同じ内容を日本の監督が撮っていたら、逆に中韓から「上映するな」とのお達しがあったんじゃないかな。
 という程度にはまあ中立だと、私は感じました。

 もちろん、人の作るものだから、完全にニュートラルであることは出来ないし、編集の仕方には当然何らかの意志が働くわけだから、そうした何かしらを「敏感な人」は受け取るのでしょうかね。
 そういう意味なら、私は多分鈍い方です。


 最後の「靖国刀」刀匠・刈谷直治さんの仕事を映しながら、靖国に参拝する人々の様々な様子を差し挟み、靖国神社の在り様を描いていきます。

 軍服を着て、参拝に来る陸海軍の将校(らしき人)と、それに従う小隊の若者。
 食事ラッパのデモンストレーション。
 靖国参拝を政治問題にすべきではないという小泉首相(当時)の発言を支持するアメリカ人と、それを応援する日本人。
 星条旗をここで掲げるなと怒る日本人。

 靖国に合祀されている家族の魂を返せと申し入れる人々。
 父祖は日本に征服され、日本に徴兵され、日本兵として戦い死んでいった、と涙ながらに訴える、台湾原住民の遺族。
  終戦60周年の追悼集会で涙を流す老人、反戦、反靖国を叫ぶ若者。

 自分と反対の意見を持つ人を、口汚く罵るのはどちらも同じ。
 感情的になって同じ言葉しか繰り返せない人。

 お兄さんを戦争で亡くされた、とあるお寺の住職さんは、国からもらった勲章を見ながら溜め息を吐く。

 うーん、私自身は親しい人を「国のため」に亡くしたことはないので実感が薄いのかもしれないですが、「お国のため、天皇陛下のため」と言われて死んでいった兵士を、国が、国として「国のために散った英雄」として祀ることに、何の不都合があるんだろうか、と思ったりします。

「国のため」「天皇のため」と言われて、父が兄が夫が息子が死んだのに「あれは間違いでした。あなたのご家族は間違ったことのために死んでいきました、ごめんね」とか言われた方がやりきれなくないですかね。
 それくらいなら、「国のために」を貫いてもらった方がいい。気がするんだけど。

 どうなのかな。

 どうもね、靖国に限らず、日中戦争に関しては、感情で語る人が多くていけないなと思います。

 「人は、自分の見たいものしか見ない」と言ったのはカエサルですが、どんな資料も、たとえその場に立ち会ってさえ、人は、自分に都合のいいように解釈してしまいがちです。

 日中戦争において、日本は悪だと思う人は、それがどんな出来事であれ悪く受け取るでしょう。
 逆に、日本は正しかった、負けたせいで何でも悪く言われるだけだ、と思う人は、でっちあげだ、嘘だと言うのでしょう。
 私の見るところ、どちらの側の人も、資料を検証するよりも、相手を言い負かすことに夢中になってしまってるようです。

 インターネットのおかげで、様々な資料、情報に触れることが可能となりましたが、それでも、あの戦争に関する理性的で客観的な情報を得ることが困難な状況にあります。

 戦前の日本がどういう国であったのか、明治維新以降、日本人のメンタリティはどうであったのか、世界をどのように捉えていたのか、学校の授業で習うことは稀です。
 まして、日中戦争そのものについては、ほとんど触れずに通り過ぎています。

 この作品が良くも悪くも話題となることで、当時のことを知りたいと思う人が増えるのは良いことではないでしょうか。

 そして、感情的にならず話し合うことのできる場が作ることが出来れば理想的です。


 最後に、刀匠・刈谷さんが、はじめに聞いていた取材の趣旨と、仕上がった作品とがかけ離れているとして、本作品から登場シーンをカットし、名前も削除してほしいと申し立てているというニュースがありました。
 試写の段階でそれを申し入れ、監督が「検討してから返答する」と答えたそうですが、そのまま、何の連絡もないままに公開されてしまったと言うことです。
 事の次第も真実も分かりませんが、好意で協力してくれた人を傷つけてしまったのなら悲しいなと思います。
 穏やかで、何も語らなかった、ただ、自分の作った刀に誇りを持っている刀匠の姿は、見ることが出来てよかったです。
| 三月 | 映画 | 17:51 | comments(2) | trackbacks(0) | -
まあ、何と言うか、竜馬を祀る必要は無かったのではないかと。

「あ、靖国さん?」ってとてもフレンドリーな中国人留学生を知っている。
| 二月 | 2008/10/14 10:26 PM |
あー。竜馬もいるんだっけ?

昭和天皇が参拝したときの映像が流れたときには
ソクーロフの「太陽」を思い出したよ。
イッセー尾形すげーなー。
| 三月 | 2008/10/15 2:25 AM |









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