映画「ワールド・トレード・センター」
 「ワールド・トレード・センター」、去る9月14日、試写会で見てまいりました。


 アメリカにとっての9.11や、その後の対テロ戦争について語ろう、なんて風呂敷を広げるときっと収拾がつかなくなるので、ここでは純粋に映画としての作品を語りたいと思います。

 もちろんネタバレありです。



 まずは意地の悪い言い方をすると「いい題材が出来てよかったねハリウッド」。
 雑多な民族の集まる「アメリカ」を一つにするには、冷戦時代の東側、テロリスト、宇宙からの侵略者……明確なる「敵」がいて、それを打倒する「正義」=アメリカである、という図式を描かなければならなかったわけだけれど、それもそろそろ閉塞気味、ネタ切れ気味なところに、これ以上はないほどの題材が飛び込んできたわけです。

 と、ここでまた9.11の衝撃について言葉を重ねると話題が明後日の方へ行ってしまいますが、まあ、そんな感じで、ほとんどの人間がそれを見て心を一つにできる映画でした。


 まだ深夜といってもいい時間にそっと起きだし、眠っている家族の顔を一人一人確認して出勤していく父親。
 夜が明けて行こうとするニューヨークの街並み。
 人々の朝。

 いかにもな軽口を叩きながら仕事へ向かう警官。

 そして。

 ずいぶん低い位置を飛ぶ飛行機の影が人々の上に落ち、ビルに映し出されたあたりで早くも「ああ、来た……」と暗い気持ちになるのはやはり、脳裏を5年前の映像が過ぎるからで、これは、恐らく見た人すべてが同じように嘆きの準備に入ることでしょう。

 その後は、救助のためにビルの中へ踏み入れたところで建物が崩壊し、瓦礫の下敷きになってしまい、救助を待つ1昼夜が描かれるわけですが、身動きの取れない彼らの呟くような会話の合間に、彼らの家族の様子や、家族を思う彼らの回想シーンなどが差し挟まれてそりゃもう泣かずにはおられません。

 いったい何が起きたのか。
 テレビの前で混乱していた我々以上に、彼らは何も知らないまま、とにかくただ、その場に取り残された人々を救おうと飛び込み、そして命を落としていったのでしょう。


 また主人公ニコラス・ケイジの演技がなかなか良くてね。
 コン・エアー以降それなりの本数ニコラス・ケイジの出演作は見てますが、私の知る限りのニコ史上最高の演技です。
 ずっと瓦礫の下で、顔を動かすことも出来ないような状況なんですが、掠れた声、抑揚の少ない台詞回しで、いまにも死んでしまいそうで彼の声が途切れるたびにハラハラするわけですよ。
 彼と二人で閉じ込められることになったもう一人の警官ヒメノ君の心細さや焦燥を一緒に体験(痛みはないけれど)。

 そのヒメノ君は、背が低くてちょっとポチャッとして見える、同僚に可愛がられてるタイプなんですが、危険な任務と分かっていて、ビルの中への救助隊に真っ先に志願するなど男気を見せてくれます。
 そんな状況でありながら、弱音を吐いたり冗談を言ってみたり、ケイジを尊敬してると告白してみたり、彼がそうして喋り続けることで、ケイジもまた、辛うじて意識をもっていられたのでしょう。
 まさに「お前が死んだら俺も死ぬ」状況。

 一方、地上では退役した元海兵隊のおじさんが、その衝撃映像を見て「神が行けと仰った。(救助のための)力を持っていることを感謝する」かなんか電波受信しつつ、現場へやって来ます。
 救助作業は捗らないまま日暮を迎えた現場は疲労感で一杯。
 海兵隊の制服はオールスルーで、どんどん奥へと歩いて行くおじさん元大尉(?)。
 なんだか二次遭難しそうでこの人のことも心配になりつつ。

 安否の分からぬまま、不安げにテレビを見つめる家族たち。
 
 ケイジの奥さん役はマリア・ベッロ、ヒメノ君の奥さんはマギー・ギレンホール。どちらも好演でした。


 監督オリバー・ストーンは、この作品にプロパガンダ的なものは一切盛り込まず、人々が思い合い、助け合うことの尊さのみを主眼に作り上げたそうです。
 その通り、非常にシンプルな、その分真っ直ぐに胸に飛び込んでくる作品となりました。
 まあ、それを描くだけなら9.11でなくてもいいという意見も、胸を過ぎりますが、それは前述の通り、見た人のすべてが、同じ衝撃と感情を共有できる稀有かつ旬な題材だったからでしょう。
 旬て言い方はまた意地が悪いですか。

 ひとまず、小難しいことは置いておいて、泣きましたよ。そりゃーもうね。
 実話系は卑怯だよね。それだけで充分心揺さぶられてるんだもん。




 9.11のあと、イスラム教徒である、アラブ人である、有色人種である、というだけで有形無形の攻撃を受けた方々もたくさんいて、それは「世界の警察」「正義」を気取るアメリカが初めて「攻撃を受けた」ということに対しての、ある意味では真っ当な、ある意味では非常に短絡的な、だからこんなことが起こるんだよ的な反応だったわけですが、こうした映画でそうした短絡的な人たちの感情に再び火が点かないことを祈ります。

 WTCでの犠牲者は2749人。
 その後の報復戦争での民間人の被害者は5万を越えたといいます。

 哀しみと怒りと憎悪の連鎖を断ち切る術を、人間はまだ見つけられずにいます。

 
| 三月 | 映画 | 18:51 | comments(5) | trackbacks(28) | -
アメリカで大きいテロや、広いセンターやテロをトレードしなかった?
| BlogPetのほれいしょ | 2006/10/05 2:21 PM |
初めまして、三月さん。 長文失礼します。
「WTC」の93便より賛否両論があるそうですが、案外良かったようですね。ストーン監督という事でもっと社会派で鋭い問題提起をするのかな? と思っていました。

日本では大きな話題になってませんが、「なぜツインビルが見事に崩壊したのか?」という疑問などが、米国で活発に再検証されているのをご存知でしょうか? シンボル映画 「Loose Change=ルース・チェインジ」が、そのタブーを追及。火災が原因で崩落したという「9.11公式報告書」を真っ向から否定する、弱冠22歳のディラン・エイブリー監督作品が、世界中から注目を浴びています。言語の壁がありましたが、10月末のDVD発売や「無料配信」があるそうです。

アメリカ人の実に3分の1は、既に政府の9・11公式見解を信じていません…。この「WTC」を理解する上でも、日本で隠されている?911情報に関心があればお薦めです。「ルース・チェインジ」=「ルース・チェンジ」の波紋の影響など詳しくは下記BBSの足跡で。これが今年の9月11日のNYでの出来事・動画。
http://www.911podcasts.com/files/video/TalkingAboutaRevolution.wmv

(尚、投稿情報やリンク先と利害関係はありません。)
http://www.wa3w.com/911/index.html
http://rose.eek.jp/911/
http://8136.teacup.com/empire/bbs?OF=0&BD=8&CH=5
| WHITE・RABBIT | 2006/10/05 11:48 PM |
>WHITE・RABBITさん

こんにちは。はじめまして。

なんかいい加減なレビューとも言えない雑感に対し、こんな真面目な情報をいただいてしまって恐縮です。
この映画に関しては、ストーン監督にしては素直すぎるほどの作りでしたが、それが良かったように思います。

「Loose Change」は過分にして存知ておりませんでしたが、なるほど興味深いですね。
英語がもっと堪能だったら……!
教えていただいたリンク先もじっくり読んでみようと思います。
重大な出来事だからこそ、一義的に片付けたくはないですね。

コメントありがとうございました。
| 三月 | 2006/10/07 12:57 PM |
こんにちは♪
TBありがとうございました!
本当に意外なほどシンプルでオーソドックスな作りでした。
プロパガンダ的なことは盛り込まないと言っている割には元海兵隊が「われわれのような者がもっと必要になってくる」なんて言ったりして、イラクへの道を匂わせていたように感じちゃいましたが、勘ぐり過ぎでしょうか?(汗)
とにかく9.11はまだまだデリケートすぎる題材だなと感じました。
| ミチ | 2006/10/13 10:29 AM |
>ミチさん

こんにちは。
うーん、確かに映画全体の印象の中では元海兵隊の人の言動がいちいち浮いてる気はしました。
実際その方はそのようなきっかけ、動悸でWTCへ行き、イラクへも行ったのかも知れませんが、果たしてこの映画の中でそれを言う必要はあったのかどうか……。
とはいえ10年、20年後だったら、逆にここまでストレートには描けなかった気もします。

うーん、あとからじわりと考えさせられるような作品でしたね。

TB返し、書き込みありがとうございました!
| 三月 | 2006/10/14 3:35 AM |









http://moon.honeybee.pepper.jp/trackback/562525
映画〜ワールド・トレード・センター
 「ワールド・トレード・センター」公式サイト先日の「ユナイテッド93」に続き、9・11の悲劇をテーマにした映画がまた公開されます。2001年9月11日、港湾警察署のベテラン巡査部長ジョン・マクローリン(ニコラス・ケイジ)と署員のウイル・ヒメノ(マイケル・ペ
| きららのきらきら生活 | 2006/09/28 8:46 PM |
ワールド・トレード・センター 主演:ニコラス・ケイジ
≪採点(読むなび!参照)≫ 合計:77点 採点内訳へ ≪梗概≫ 2001年9月11日、港湾警察署のベテラン巡査部長ジョン・マクローリンと署員のウィル・ヒメノらは、同時多発テロの被害を受けたワールド・トレード・センター
| 読むなび!(裏) | 2006/10/04 10:33 PM |
「ワールド・トレード・センター」試写会レビュー この想いは、どこへ向かうのか。
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ワールド・トレード・センター
 ニューヨークにあるワールド・トレード・センターには行った事が無い。  日本に住む僕にとっては、あの事件以前はそれほど意に留める事もあまり無く、ニューヨークにある二つ並んだ大きいビルという認識しかなかった。貿易センターとも呼べるこの
| とにかく、映画好きなもので。 | 2006/10/07 8:44 PM |
【劇場鑑賞111】ワールド・トレード・センター(WORLD TRADE CENTER)
あの日、世界は恐ろしい悪を目撃した。 しかし2人だけは見た。尊い何かを―― 勇気そして生還 これは、真実の物語である。
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『ワールド・トレード・センター』鑑賞!
『ワールド・トレード・センター』鑑賞レビュー! 勇気そして生還??これは、真実の物語 『ワールド・トレード・センター』 2006年10月7日より全国超拡大ロードショー 製作国?アメリカ ビスタサイズ/ドルビーデジタル 上映時間?129min
| ☆★☆風景写真blog☆★☆healing Photo! | 2006/10/13 2:49 AM |
映画「ワールド・トレード・センター」
映画館にて「ワールド・トレード・センター」 大惨事から奇跡的に生還した男たちの実話を元に、オリバー・ストーン監督が9.11を描く。 生粋のニューヨーカー、ストーン監督らしく、明けて行く2001年9月11日の朝のNYの描写が美しい。カーラジオから流れる♪♪太陽が昇
| ミチの雑記帳 | 2006/10/13 10:24 AM |
ワールド・トレード・センター
テロの主題は弱く,社会派ではないものの, 犠牲者を悼む気持ちに溢れ, 悲劇を見つめる眼差しは力強い。
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ワールド・トレード・センター
製作年度 2006年 製作国 アメリカ 上映時間 129分 監督 オリヴァー・ストーン 脚本 アンドレア・バーロフ 音楽 クレイグ・アームストロング 出演 ニコラス・ケイジ 、マイケル・ペーニャ 、マギー・ギレンホール 、 マリア・ベロ 、スティーヴン・ドー
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映画「ワールド・トレード・センター」
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「ワールド・トレード・センター」★★★☆ ニコラス・ケイジ主演 オリヴァー・ストーン監督、2006年アメリカ 悪夢が現実になった日。 その日もNYは変わりなく朝を迎え、 人々は同じ一日を過ごすはずだった。 「9.11」 この映画は救出された2名の警官
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ワールド・トレード・センター
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