映画「リバティーン」
 リバティーンとは、放蕩者という意味だそうですが、映画で描かれたロチェスター伯爵を見るに「そうでありたいと願い続け、そうはなれなかった人」のようでした。

 17世紀イギリス。
 チャールズ2世に愛された天才、2代目ロチェスター伯爵ことジョン・ウィルモット。
 美を愛し、自由を愛し、女を愛し――酒と放蕩と梅毒で、33歳で生涯を閉じた。

リバティーン
リバティーン


 さて、映画に添ってロチェスター伯爵(以下ジョニー)のご行状を眺めると、生まれながらに持っていたものが気に食わないんだけれど、それを放り出せはしなくて、駄々を捏ねていた人生のように見えます。
 少なくとも、作中ではジョニーが「天才」と国王や、世の中に愛されているという前提が既にあるところからはじまってしまうので、一体何がそんなにすごかったのかはイマイチ伝わってきませんでした。

 国王の寵愛を受けながら、その権力に反発し、不道徳と眉を顰められるようなことには片っ端から手を出す。
 何度も国王を怒らせ、幽閉されたり追放されたりしながら、けれど国王は彼を呼び戻してしまう。
 この二人の愛憎なのか執着なのか、それとも政治的駆け引きなのか、そのあたりを主眼にすれば面白かったのだろうに、リジー・バリーとの関係を描くことに時間が割かれ、そのわりに二人の描写は、表面をなぞっただけのような中途半端さ。
 バリーを愛したことを認めるのが怖くて、領地に戻っておきながら、やはり耐え切れず、深夜馬を駆ってロンドンへと急ぎ、通りで声を上げて愛を乞う姿は、完全に空回り風味。

 映像は拘りぬいていたようです。
 薄暗く、不潔なロンドン、色彩の乏しい街や酒場に対して、色鮮やかで明暗の濃い宮廷、いつも薄曇の領地。ただし、人物を捉えた画面が多く、領地にしても宮廷にしても広がりはあまり感じませんでした。
 建物の密集するロンドンや劇場の中などはいい感じの息苦しさだったので、そこが残念です。

 役者さんたちは皆さん良かったです。
 妻役のロザムンド・パイク。
 後半の激しい怒りや慟哭は本当に素晴らしかった。「プライドと偏見」の穏やかで控えめな長女役とはまるで正反対のようでありつつ、あのジェーンにも、こんな一面があるのかも、とちょっと思ってしまったり。

 台詞が多いわけではないけれど、印象深い、伯爵の母役のフランチェスカ・アニス、娼婦役のケリー・ライリー、人を食ったような飄々とした佇まいでありながら、最後まで忠実だった従者オールコック役のリチャード・コイル。

 マルコヴィッチは、普段の怪演ぷりを抑えて、ロチェスター伯を見つめる国王に徹していましたね。やあ、でも所作がきれいで本当に素晴らしい。

 そしてデップは時に過剰すぎるほどでしたが、ジョン・ウィルモットという人が「放蕩者ジョン・ウィルモット」を演じていたのだとすれば、それでいいのかもしれません。

 映画のオープニングとエンディングがまた印象的でした。
 暗い画面に映し出されるジョニー。
 見栄を張り強がっていたオープニングに対して、すべてを曝け出し、何も飾ることのなくなったエンディング。
 姿は消えていっても、囁き続ける声。


 淋しがりは激しいジョークを欲しがるのさ、と歌った吉井和哉を思い出したのは内緒です。
| 三月 | 映画 | 18:45 | comments(0) | trackbacks(7) | -









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